サンティアゴ・デ・コンポステーラは、バチカン、エルサレムと共にキリスト教の三大聖地の一つに数えられます。813年に星に導かれた羊飼いが、聖ヤコブの墓を発見したことで、アストゥリアス王国のアルフォンソ2世がロマネスク様式の小さな教会を立て、ラテン語のcompositum(お墓)からとり、サンティアゴ・デ・コンポステーラと名付けられたと言われています。※諸説あります。
2025年4月に「聖地サンティアゴ巡礼と世界遺産紀行」に添乗員として同行させていただきました。
マドリッドに到着後、サラマンカに向かいます。着後、サラマンカ大聖堂へ。ロマネスク様式の12世紀の旧大聖堂とゴシック様式がメインの16世紀の新大聖堂が聳えます。なぜ、新旧の大聖堂が存在するかというと、1513年に旧大聖堂が手狭になった為、新大聖堂の建設が開始されます。その後200年の時を経て、1733年に新大聖堂が完成しました。建設が200年以上にわたったため、その時の流行りであったルネサンス建築・バロック建築、プラテレスコ様式も取り入れられ、4つの様式が混在する大聖堂になっています。また大聖堂にはパイプオルガンが設置されています。「鳴らずのオルガン」と呼ばれ、200年以上も壊れたままで放置されていましたが、パイプオルガン製造者の辻宏氏が紆余曲折を経て1990年に修理を完成させ、サラマンカ市民に感動を与えたそうです。6年後、辻宏氏が故郷の岐阜県のサラマンカホールのためにサラマンカ大聖堂の複製のパイプオルガンを建造しました。このパイプオルガンは日本初の完全なスペイン式パイプオルガンだと言われています。
サマランカの大聖堂
大聖堂の内部
復活したパイプオルガン
翌日はアストルガに向かいます。着後、まずは大聖堂へ。この大聖堂は11世紀に建てられた際はロマネスク様式でしたが、1471年に拡張工事が行われ18世紀にようやく終わりました。こちらもサマランカ大聖堂と同様にその時の流行りであった様式を取り入れ、内部はゴシック様式、鐘塔の外装はバロック様式、ファサードとポーチはルネッサンス様式、その他、フランボワイヤン様式やプラテレスコ様式など、さまざまな建築様式を生み出しました。右側の鐘塔は1755年のリスボン大地震の際に倒壊したものを、他の建材で修復したため色が異なっています。
アストルガの大聖堂
リスボンの大地震後に建て替えた鐘塔
ゴシック様式の内部
その後、ガウディの司教館へ。1889年に着工し1893年に上層階と屋根以外の部分はほぼ完成しますが、依頼主の司教の死や司教区側との対立があり、建設を途中で放棄します。その後、数人の建築家が跡を継ぐもののうまく行かず、最終的にはマドリード出身の建築家リカルド・ガルシア・ゲレタが完成させました。司教館は、地上3階、地下階で構成され、外観は、レオン州のエル・ビエルソで採れる灰色の花崗岩が使用されています。1階は司教館の設計と建築の歴史などを展示しており、当時のカタルーニャ地方で流行したモデルニスモの影響を受けたムデハル様式風の造りになっています。2階は司教の間、待合室、礼拝堂など、ステンドグラスやフレスコ画が美しいアールヌーボー風の造りになっています。アストルガでの見学を終え、サンチャゴ巡礼の起点となるサリアへ向かいました。
ガウディの司教館
ムデハル様式の1階
美しいステンドグラスの2階
巡礼1日目 サリア~ポルトマリン 歩程=6時間30分 22.3km
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼路を100km以上歩き、かつ、1日に2つ巡礼手帳にスタンプを押しますと巡礼証明書が発行されますので、本ツアーはサリアから巡礼を開始します。ホテルを出発し、農村や丘陵地帯を通過しベルサル湖畔の村ポルトマリンへ。ポルトマリンの村は元々、ミーニョ川のほとりにありましたが、ベルサル貯水池建設の為、高台にある現在の場所へ移設されました。村の中心にあるサン・ニコラス教会も同様に、積み重ねてある石を1つ1つ取り外し、エジプトのアブシンベル神殿のように組み立てました。教会の壁には石の場所を特定するために書かれた番号が残っています。またサン・ニコラス教会はガリシア州で最大のバラ門(円形窓)があり、サンティアゴ・デ・コンポステーラの栄光の門に影響を受けたヨハネの黙示録の24人の長老が彫られた正門があります。
農村を歩く
モホン(帆立貝の道標)
ベルサル貯水池
高台に移設された村
サン・ニコラス教会
ガリシア州で最大のバラ門
巡礼2日目 ポルトマリン~パラス・デ・レイ 歩程=7時間30分 25km
ホテルを出発し、国道沿いの道を歩きます。本日はルート上に「カストロマヨール」という古代ヨーロッパ、ケルト人の遺跡があります。紀元前7世紀末にドナウ川上流付近から、ピレネー山脈を越えてイベリア半島にきたケルト人はカストロという集落を作ります。カストロは主に山の中腹にあり、石を積み上げて作った要塞化された集落で、家畜の飼育や穀物の保管なども行っていました。カストロという苗字はガリシア州発祥で、キューバ革命を指導したフィデル・カストロ元議長の父もガリシアからの移民です。その後、オスピタル・デ・ラクルス峠、リコンデ峠を越え、パラス・デ・レイへ。
ガリシア州の穀物庫(オレオ)
カストロマヨール遺跡
リコンデ峠を目指す
巡礼3日目 パラス・デ・レイ~メリデ 歩程=5時間 15km
ガリシア州はオウレンセ、ポンテベドラ、ルーゴ、ア・コルーニャの4つの県があります。本日はルーゴ県からラ・コルーニャ県に移動します。ちなみにア・コルーニャ県の最大都市はア・コルーニャですが、ガリシア州の州都はサンティアゴ・デ・コンポステーラです。道中にはローマ時代のサン・ジョアン・デ・フレロス橋があり、これを通過しメリデに向かいました。昼食はメリデ名物のタコ料理をご賞味いただきました。
ローマ時代の橋
メリデ名物のタコ料理
巡礼4日目 メリデ~アルスーア 歩程=4時間 13.9km
本日はボエンテ村を通り、イソ川を渡たり、リバディソへ。ここはフランス人の道で最後の巡礼者病院がありました。現在はアルベルゲになっています。その後、丘陵を登りアルスーアへ向かいます。本ツアーで1番短い行程です。ホテル着後はバルでビールを飲まれたり、買い物されたりと皆様、ゆっくりしていだきました。
巡礼手帳にスタンプ
イソ川を越えリバディソへ
アルスーア周辺の農村
巡礼5日目 アルスーア~ラバコージャ 歩程=8時間 27.8km
本日は小さな村々を通り、国道沿いの道を何度も渡りながら歩きます。カジェの村を通過し、サンタイレーネの村を越え、ルアの村まで下ります。その後、国道から離れ、樹林帯を抜けアメナルへ。そこからサンティアゴ・デ・コンポステーラ空港の外周を歩き、ラバコージャに向かいました。本ツアーで1番長い行程でしたが、誰一人遅れる事なく、歩き通せました。
アルスーア郊外
サンタルチア教会
巡礼6日目 ラバコージャ~サンティアゴ・デ・コンポステーラ 歩程=3時間 11.1km
本日はいよいよサンティアゴ・デ・コンポステーラへ。舗装道を歩き、サンマルコスの村へ。そこから、坂を上りますと歓喜の丘(モンテ・ド・ゴゾ)に到着です。この丘の名前は、その当時にサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指し歩き続けてきた巡礼者たちが、丘の上から初めて大聖堂の尖塔を目にして「歓喜の声を上げた」ことに由来しています。また、以前は、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が訪れた時に建てられたモニュメントがありましたが、老朽化しており倒壊の危険があった為、撤去されています。 ここからサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂までは残り5kmです。新市街からルア・デ・サンペドロ通りを通り、ポルタ・ド・カミニョへ。
ここは10世紀頃に作られた町を囲む城壁の入り口の1つで、昔と同じようにこの入り口を通過し大聖堂へ向かいます。
歓喜の丘から大聖堂を臨む
ルア・デ・サンペドロ通り
ポルタ・デ・カミニョ
ついにサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂に到着しました。115kmを6日間で歩き通した巡礼はこれにて終了します。今回は熊野古道を歩き、「二つの道の巡礼」を達成された方がいらっしゃいました。達成者は「二つの道の巡礼者」限定ピンバッジをもらうことができます。 ピンバッジには、サンティアゴのホタテ貝と熊野古道の八咫烏(やたがらす)、2つのシンボルがあしらわれております。
サンティアゴの大聖堂
記念ピンバッジー裏
記念ピンバッジー表
夜は大聖堂で行われるミサに参加しました。サンティアゴ巡礼の巡礼者にとって、大聖堂は巡礼の終着地 で、毎年40万人以上の巡礼者が訪れます。今回はボタフメイロ(香炉振り)と呼ばれる宗教儀式を体験しました。ボタフメイロは長い巡礼路を歩いてきた巡礼者の体臭を抑えるために行うものではなく、大聖堂に到着した人々の浄化と、神聖な空間の重要性を象徴している、壮大な儀式だということが実感できました。
ボタフメイロ
🎶香炉が振れる音と聖歌の響き...ボタフメイロの実音もぜひご体感ください。
写真をクリックいただくと、まいたびInstagramでご覧いただけます。
最終日です。本日は専用車で、フィステーラに向かいます。サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂が公式の終点になっていますが、フィステーラの岬には0Kmポストがあります。ここまで歩いた巡礼者は着ていた汚れた服を脱ぎ捨て、岬で燃やした後、新しい服に着替え、「過去」と決別し、新しく生まれ変わると信じられていました。岬の前に、どこまでも広がる大西洋を臨み、旅を締めくくりました。
0kmポスト
巡礼で使った服や靴
フィステーラ岬
弊社のサンティアゴ巡礼は1日平均で19kmを6日間歩きます。ご自身の足で歩くことで、サンティアゴ・デ・コンポステーラやスペインの歴史を実感として理解でき、聖地巡礼をより深く学ぶことができます。また、巡礼を達成すれば、「巡礼証明書」を貰うことができ、カトリック信者でなくても忘れられない貴重な体験と経験できます。魅力満載のサンティアゴ巡礼を一緒に歩いてみませんか?
【文・写真】
城戸和広
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2026年5月24日(日)発 R5626 聖地サンティアゴ巡礼と世界遺産紀行 9泊12日