登山初心者が富士山を目指す教室「安心安全富士登山2025」もステップ3を迎え、富士山の好展望地として知られる竜ヶ岳(1485㍍、山梨県)で5月2日に行われた。一行19人は本栖湖畔の登山口を午前10時20分過ぎに出立した。
1班は石井啓太・登山ガイドが、2班は渡辺四季穂ガイドがそれぞれ先頭に立った。いきなり急傾斜の階段から始まった。石井ガイドは「お尻とももの筋肉、大きな筋肉を使って登ってください」と声をかけた。
石井ガイドを先頭に進む
30分ほど歩くと雨粒が落ちてきた。「レインウェアを着用してください」と指示が飛んだ。「登山靴を履いたまま履けるウェアが便利です」「レインウェアは登山道具の専門店で買ってください。店員さんに選んでもらってくださいね」。アドバイスが続いた。
樹林帯の登り道をゆっくりと進んだ。ミズナラやブナの新緑が美しい。雨具を着けていても雨水が侵入し、身体を濡らし、体温を奪ってゆく。首元にタオルを巻く、袖口を絞る、雨用の手袋を用意しておく......各自が対応を工夫しなければならない。
午後12時10分過ぎ、笹におおわれた稜線に到着した。もうきつい登りはなく、背丈ほどもある笹が強風を遮ってくれた。同28分、1班が山頂に到達した。広々とした山頂は晴れていれば、大勢の登山者がくつろぎ、富士山を遠望できる。だが今回は、大きな水たまりが広がり、他の登山者は誰もいなかった。それでも参加者は「やっと着いた」と安どの表情を見せて、写真撮影を行った。 雨の山頂に到着
晴れの竜ヶ岳山頂(2017年11月撮影)
同39分には入れ替わるように2班が到着した。雨は強くなり、山頂滞在は数分だけとなった。下山路は終始笹やぶの中で、川のようになった道が続いた。渡辺ガイドは「ぬかるみが続きますよ。小またで歩いてください」「呼吸もしっかり」と注意喚起を続けた。午後1時半には、東屋に到着した。
スミレが咲いていた
下山口までの中間地点だ。屋根があり、みな一息をついた。水分を補給し、行動食を口にする人も。布製の手袋を着用して、両手が濡れた人もいた。「雨の日に防水でない手袋はちょっと大変です」と渡辺ガイド。
雨の中、下山する渡辺ガイドら
登山には軍手など布製の手袋は向かない。登山用か防水の手袋を用意したい。一行はさらに下山を続け、午後3時過ぎに本栖湖キャンプ場に到着した。本番となる富士登山が晴天とは限らない。「良い経験になりました」と男性参加者が話してくれた。富士山に向けて貴重な練習となったはずだ。
雨の登山は避けたい。だが、数日間の縦走登山では雨の日もあるだろうし、突然の雨ということもある。濡れと冷えの対策は万全にしたい。筆者はザックに大型のビニール袋を数枚入れている。本格的な降雨に見舞われたら、ザックの中の荷物をビニールで覆ってしまうためだ。手袋は雨用のものを携帯している。ホームセンターなどで手に入る「テムレス」(ショーワグローブ)がお勧めだ。透湿防水性能があり、ザックに入れておいてもかさばらない。登山靴への水の侵入を防ぐためにスパッツもあるといいだろう。
ダイヤモンド富士(撮影年不明)
【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】
●筆者プロフィール●
1985年毎日新聞社入社、東京社会部、宇都宮支局長、生活報道部長、東京本社編集委員、東京本社広告局長、大阪本社営業本部長などを歴任。
2014年に公益社団法人日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡの資格を取得。毎日新聞社の山岳部「毎日ハイキングクラブ」前会長