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まいたびブログ

毎日新聞旅行(東京)「まいたび®」公式ブログです。
国内・海外登山、講師同行「風来人」などツアーの添乗記やトピックス、「旅」の素晴らしさをご紹介するなかで、
旅を楽しむ心がふんわり広がっていく、そんなことを夢見ています。

安心安全富士登山教室2025 ステップ6(硫黄岳)

2025年6月27日

「今日は、八ケ岳ブルーですね」。
渡辺四季穂・登山ガイドは蒼天を見上げて、そう声をかけた。
周囲にいた16人のいく人かはうなずいた。
一行は「まいたび(毎日新聞旅行)」の初心者向け登山教室「安心安全富士登山2025」の参加者たちだ。
6月20日午前10時35分、登山口の美濃戸口を出発した。

蒼天の八ケ岳を背に記念撮影.jpgのサムネイル画像                   蒼天の八ケ岳を背に記念撮影

林道をゆっくり歩き続けた。
2時間ほどで林道は終わり、山道に入った。

沢沿いの道を歩く渡辺ガイド.jpg                   沢沿いの道を歩く渡辺ガイド

イワカガミなどの高山植物が出迎えてくれた。
「花がきれいですね」「でも名前をすぐに忘れちゃいます」と参加者に語りかけ、「そうそう」と笑いを誘っていた。

イワカガミ.jpg                      イワカガミ

クリンソウ.jpg                      クリンソウ

午後3時10分、山小屋・赤岳鉱泉に到着した。
男女別に部屋割りをし、それぞれの部屋でくつろいだ。
小1時間ほど休憩した後は、登山専用ヘルメットのかぶり方の講習会が開かれた。
渡辺ガイドが「ヘルメットを被った時に、おでこは出さないで」「あごひもをしっかり締めましょう」「前後左右にずれないように」と話した。
参加者も実際に装着して、ずれ具合などを確認した。
落石での死亡事故が起きている富士山では、登山用ヘルメットは必須だ。
また、「カッパ(雨具)の上着は、防寒着にもなるのですぐ出せる場所に入れて」「(富士山では)飲み水は小屋ごとに買ってください。
(高山病対策として)たくさん飲んでください」など実戦的なアドバイスを伝えた。

ヘルメットのかぶり方を講習した.jpg                   ヘルメットのかぶり方を講習した


 さて、山小屋・赤岳鉱泉は1959年に営業を開始したという。
筆者は「山のホテル」と勝手に呼ばせてもらっている。
山深い場所にありながら入浴できる(25年は改装工事のため7月上旬から)。
個室も多く、室内は広い。寝具も清潔だ。
晩ご飯には名物のステーキ定食が提供され、分厚いステーキを鉄板で自ら焼いて食べる。
山中で肉の焦げる匂いは格別だ。
午後6時からの夕食で、ステーキを堪能した。
「美味しい」「山で食べられるとは」と歓声が上がった。

赤岳鉱泉の夕飯。ステーキ定食は大好評だ.jpg                赤岳鉱泉の夕飯。ステーキ定食は大好評だ


 硫黄岳への登はん口は、赤岳鉱泉の目前にある。
21日午前5時半、一行は足を踏み入れた。
「出発の時点で、あまり着すぎないように。すぐ暑くなりますよ」「歩き始めは呼吸が大事です」と渡辺ガイドが注意喚起した。
奥深い樹林帯に入り、徐々に高度を上げていく。
平たん地に出ると、「呼吸を整えて」と呼びかけた。

7時26分、「赤岩の頭(かしら)」と呼ばれる稜線に到達した。
青空の下、北アルプスや御嶽山などが遠望できた。
「すごい」「絶景だ」と感嘆の声が上がった。
小休止の後、ヘルメットを被り直した人々が頂(いただき)を目指した。
山頂直下に岩場があり、崖地にもなっている。
滑落しないように、慎重な歩行が求められた。

難所を抜けた8時16分、広々とした硫黄岳山頂に飛び出した。
「着いた」と安堵の表情が広がった。
「硫黄岳」と記された看板を背に、記念撮影が繰り返された。
さらに火口のような断崖絶壁を巻くように歩くと、富士山が遠望できた。
「富士山だ」「来月にはあそこに行く。頑張ります」。
参加者は口々にそう語ってくれた。

硫黄岳山頂.jpg                      硫黄岳山頂



いよいよ富士山教室も、富士山登頂を残すのみとなった。
1人でも多くの参加者が富士山山頂に立てますように...そう願わずにはいられない。


【毎日新聞元編集委員、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ・小野博宣】