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まいたびブログ

毎日新聞旅行(東京)「まいたび®」公式ブログです。
国内・海外登山、講師同行「風来人」などツアーの添乗記やトピックス、「旅」の素晴らしさをご紹介するなかで、
旅を楽しむ心がふんわり広がっていく、そんなことを夢見ています。

ピレネー山脈縦走トレッキング・ブレッシュ・ド・ローランの壁を越えとモンドト山登頂

2025年12月25日

 ピレネー山脈はイベリア半島の北東部を約430kmにわたって連なっている山脈で、フランス、アンドラ、スペインの国境になっています。2025年7月にこのフランスからスペインに縦走するトレッキングに同行させていただきました。

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 旅のスタートはフランスのトゥールーズです。まずはここからピック・デュ・ミディ展望台(2,877m)があるラモンジー(1,800m)へ。着後、ロープウェイを乗り継いで、ビゴール山の山頂(2,877m)へ。ここには1,908年に建てられた天文台があり、1,963年にはアポロ計画の為に、アメリカ航空宇宙局(NASA)によって設置された望遠鏡があります。今回は天体観測ではなく、ピレネー山脈の眺望を楽しむ為に来ましたが、ガスってなにも見えません。天気の良い日はピレネー山脈最高峰のアネト山(3,404m)や第二の高峰ポセッツ(3,375m)が臨めます。その後、ツール・ド・フランスで難所として知られるトゥールマレー峠を通過し、登山の起点となるガヴァルニーへ向かいました。

2.jpg3.jpg登山1日目 世界遺産ガヴァルニー大圏谷トレッキング  歩程=5時間
ホテルから徒歩で登山口に向かいます。遊歩道を歩かず、登山道を緩やかに登りパイリャ小屋を経由し石灰岩の岸壁部分をトラバースし、オテル・ド・シルクまでゆっくり下っていきます。ここからはヨーロッパで2番目の落差を誇るグランド・カスケードの滝(432m)が展望できます。

4.jpg5.jpg6.jpg昼食後、グランド・カスケードの滝を源流とする川を渡り、右岸を折り返し周遊します。周遊することにより、氷河の浸食で造られた「自然のコロッセオ」と評される世界遺産のガヴァルニー圏谷の絶景を堪能することができました。

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登山2日目 ピレネー山脈トレッキング  歩程=4時間
ホテルから専用車で、コル・ド・タンタ(2,200m)へ向かいます。ここにはピック・ド・タンタ(2,262m)という小さなピークがあり、そこに登るとタイヨン峰(3,144m)をはじめとするピレネー山脈の名峰を臨むことができます。しかし、本日はガスってなにも見えません。

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下山後、サラデッツ小屋を目指し進みます。スペインとの国境に近い、ブチァロ峠を通過すると風が強くなります。タイヨン峰の氷河から流れる雪解け水のゴルジュ帯を通過しサラデッツ小屋(2,587m)へ。サラデッツ小屋手前からは明日、通過するローランの裂け目(壁)を見ることができました。

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登山3日目 フランス・スペイン国境越えトレッキング  歩程=8時間
 本日は道中すべてがハイライトです。山小屋を出発するといきなり、ローランの裂け目(壁)への登りが始まります。ザレ場の急登から岩場を登り、ローランの裂け目(2,804m)へ到着。今回は残雪が少なく1時間程で到着できました。ローランの裂け目の伝説は11世紀に成立したフランスの叙事詩で、「ローランの歌」というものがあります。イベリア半島でのフランク王国とイスラム帝国との戦いを描いた物語で、十二勇士(パラディン)と呼ばれる、武勇に秀でた騎士がおり、その一人のローランの物語です。簡潔に説明しますと、味方の裏切りにより、追い詰められたローランが聖剣デュランダルだけは奪い取られまいと、最後の力を振り絞って岸壁に斬りつけますが、岸壁の方が真っ二つに割れてしまい、その後、ローランは絶命しました。ローランの裂け目はその時にできたものだと叙事詩では書かれています。しかし、実際は778年に起きた「ロンスヴォー戦い」で、ローランは戦死しています。この戦いはピレネー山脈のフランス・スペイン国境にあるイバニェタ峠で起こった、フランク王国軍と山岳民族バスク軍の戦いです。戦いの模様は長年かけて脚色され、ローランの裂け目となって、フランスの叙事詩となり11世紀に成立しました。

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国境を越えスペインに入国し、ゴリッツ小屋を目指します。道中にグルータ・エラダ・デ・カステレという洞窟に立ち寄ります。この洞窟は万年氷洞で、ヨーロッパで最高所(2,765m)の万年氷洞といわれています。中には入ることはできませんが、入り口から内部の様子を窺がうことができます。その後、スペイン語で「荷降ろし」を意味するデスカルガド山(2,627m)を登頂します。その昔、スペインからローランの裂け目を越えフランスに向かう際は、ここで荷物を降ろし、歩いて国境を越えていたことに名前は由来します。山頂からは、ローランの裂け目が見渡せます。

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 登頂後はオルデサ渓谷の源頭部へ。ピレネー山脈はアルプス=ヒマラヤ造山帯に分類される新期造山帯です。オルデサ渓谷では、地層が横からの強い圧力を受けてS字のようにぐにゃぐにゃ曲がり、隆起して形成された褶曲山脈であることを確認できます。明日、下る渓谷の底を眺めながら、ゴリッツ小屋(2,200m)までのトレッキングを楽しみました。

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登山4日目 世界遺産オルデサ渓谷トレッキング    歩程=5時間
本日はトルラに向かいます。ジグザクを繰り返し、渓谷の底まで下ると、コラ・デ・カバージョと呼ばれる滝があります。「馬の尻尾」を意味するこの滝は、馬の尾を垂れたように見えることから名付けられたといいます。

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その後、平坦で緩やかな登山道を下ります。振り返ると、ピレネー山脈第三の高峰、モンテ・ペルディド(3,355m)が臨めます。「失われた山」を意味するこの山は、石灰岩の山としてはヨーロッパ最高峰ですが、ガヴァルニー圏谷エストベ圏谷のピークに隠れて、フランス側からは山頂が見えないことに名前は由来しています。プラデラ(1,315m)に無事到着し、国境越えのトレッキングは終了です。ホテルに到着後、トルラ村の散策を楽しみました。

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登山5日目 モンドト山登頂    歩程=5時間
本日はアニスクロ渓谷の好展望地、モンドト山(1,964m)を登頂します。専用車で、登山口のネリン(1,281m)へ向かい、緩やかに登ります。川を通過したあたりから、木がほとんどなくなります。これは森林限界ではなく7年前の山火事で樹林帯が焼けてしまった為、途中から高い木ほぼありません。山頂に近づくとアニスクロ渓谷とモンテ・ペルディド(3,355m)が姿を現します。ローランの裂け目はここからは臨めませんが、「あの山脈を越えて来たんだな」と、国境越えトレッキングを達成したことを実感できます。

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山頂からは眼下に広がるアニスクロ渓谷の絶景が広がります。我々が訪れた、オルデサ、モンテ・ペルディド国立公園には4つの渓谷(アニスクロ、エスクエタ、オルデサ、エスクアイン)がありますが、そのうち2つの絶景を楽しむことができました。

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観光1日目(サラゴサ)

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 専用車でアラゴン州の州都サラゴサに向かいます。まずはアルフファリア宮殿へ。11世紀のタイファ時代(イスラム小王国)に建設された、イスラムの城を兼ねた夏の宮殿です。9世紀には塔だけあり、そこから増改築を繰り返し今の形になりました。また、タイファ時代の宮殿では唯一残る大型建築で、アルハンブラ宮殿はアルフファリア宮殿を模して造られたといわれています。アルフファリア宮殿、アルハンブラ宮殿、メスキータ(モスク)を3大ヒスパノ-ムスリム建築と呼ばれています。

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 続いて、ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂へ。この教会は聖母マリアに捧げられた最も古い教会と伝えられています。簡潔に説明しますと、イエスの復活の後、ヤコブはスペインでの伝道に失敗し、落胆していましたが、エブロ川のほとりで、祈りを捧げているときに、聖母マリアが柱の上に出現するという奇跡が起きました。そして、この地に教会を立てるように命じ、その柱と木彫りの木像を与えました。それから1年後、ヤコブはマリアの柱が出現した場所に小さな礼拝堂を立て、その後、ヤコブはエルサレムに戻りますが、ヘロデの王(ユダヤ)のアグリッパ1世に処刑されました。ヤコブの遺体は弟子達により、今のサンティアゴ・デ・コンポステーラに埋葬されます。サラゴサはサンチャゴ巡礼にも関係のある場所であることが実感できました(詳しくはサンティアゴ巡礼のブログをご参照ください)。

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 サラゴサ最後の見学地はサン・サルバドール大聖堂です。
紀元前1世紀には、この場所にバシリカの礼拝堂があり、西ゴート王国時代にサン・ビセンテ教会になり、8世紀初頭からイスラム教徒の支配下となり、モスクとしても使用されました。12世紀にアラゴン王が統治するとロマネスク様式の教会に改築され、その際に北向きで改築されます。これはモスクとして使用された時代は東向きで、メッカに向かって礼拝を行っていた為、同じ方角を避けるためです。その後、ムデハル、ゴシック、ルネッサンス、バロック様式も取り入れられた大聖堂です。

観光2日目(バルセロナ)

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 スペイン滞在、最終日は専用車でバルセロナの空港に向かいますが、途中で、サクラダ・ファミリアの外観見学をしました。1882年に着工しましたが、ようやく来年完成するとの事です。スペインではロマネスク様式を始めとする、様々な歴史ある建築様式の教会や聖堂がありますが、建設中のサクラダ・ファミリアは鉄筋コンクリートで作られているのを見て、衝撃を受けました。現在に合わせた建築様式だとも思いますが、サンティゴ巡礼やサラゴサで見た教会の方が、古き良き時代を思い出すことができます。

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弊社のピレネー山脈縦走トレッキングはフランスから「ローランの裂け目」を越えてスペインに向かいます。歩いて国境を越えることにより、その地の絶景や文化に触れることができ、フランス・スペインの歴史を実感として理解できます。毎日が見所満載のピレネー山脈を一緒に歩いてみませんか?

【文・写真】

城戸和広

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2026年7月15日(水)7泊10日R5683ピレネー山脈縦走トレッキング・ブレッシュ・ド・ローランの壁越えとモンドト山登頂