添乗員ツアーレポート ◆ピレネー山脈トレッキング 添乗記




 6月上旬にフランスとスペインの国境にあるピレネー山脈でトレッキングをしてきました。
 ピレネー山脈は、ほぼ東西に延びており、東西430km、南北は約100kmと言われている山脈です。 ヨーロッパアルプスといえば、誰もがまずはスイスアルプスを挙げるでしょう。 スイスアルプスは今も昔も、そしてこれからもずっとヨーロッパアルプスの不動の王者であり続けることは間違いありません。 しかし、「ちょっと日本人が多すぎて・・・」とおっしゃる方に、ぜひお勧めしたいのがピレネー山脈です。
 スイスのようには観光開発が進んでおらず、まだまだ欧米人中心のトレッキングエリアです。今後も大きく開発されることはないのでは、 と個人的に思いますし、むしろそうであって欲しいです。和食の店もない、日本語の看板もない、 田舎に行けば英語すら通じにくいという環境はむしろ貴重な感じがします。せっかく日本を飛び出して異国を楽しみに来たのだから、 先進国とはいえ、そんな環境があっていいのではないでしょうか。

 さて、ピレネートレッキングを一言で言えば、"まだまだ奥が深い"というのが私の印象です。 日本ではまだ一部しか紹介されていませんが、トレッキングコースは無数にあります。 それに、日帰りをはじめ、山小屋を使った縦走コースや国境越えまで、かなりのバリエーションが楽しめそうです。 今回は日帰りを繰り返すというパターンで歩いてきました。
 トレッキング初日のトゥールモースはあいにくのガスで景色がない上に気温も低かったために軽めのハイキングで終わりました。 ルルド(カトリックの聖地)でお願いしてきたんだけどなー、とついぼやいてしまいました。 それでも現地ガイドのフランス人は陽気で、花はもちろん、小川の中からサンショウウオのようなイモリのような生き物を見つけ出し、「トカゲ」と紹介してくれました。 冷たい山上の小川の中に手を入れて探してくれたのですから、「トカゲ」で十分私たちには伝わります。

 翌日は、晴れてくれよと誰よりも祈りながら朝を迎えました。 宿の近くからも朝日を受けるガヴァルニーが見えたときはほっとしました。昨日の夕方は見えなかったのでなおさらです。 人形のように小柄で陽気な宿のマダムに見送られ、意気揚々と皆さんと歩き始めました。 ガヴァルニーは花が多い場所なので楽しみでした。コース選択はさすが現地ガイド。観光客が歩くような道とはまったく違い、地元の人しか歩かないのではと思えるような道を当たり前のように花を探しながら進んでいきます。 評判通り花の種類はとても豊富でした。特にランの仲間は目立ち、色も鮮やかで種類も多く、 多くのお客さんがたくさん写真を撮っていました。 次々にいろいろな種類が目に飛び込んでくるので、現地ガイドも忙しく説明してくれるのですが、なにせ英名なので覚えるのに苦労します。 こんな感じで花を見つけては立ち止まりながら屏風のような迫力のガヴァルニーの中心に到着。岸壁の3分の1ほどがガスに覆われていたために全体は見えませんでしたが、 その迫力は伝わります。足元には小さな株ながらも相変わらずいろいろな花が咲き、目の前の岸壁からいくつもの滝が流れ落ちる光景の中で食べる手作りのランチは最高でした。

ガヴァルニーの小屋前で ガヴァルニーを前に


 4日目は、ビニュマール北壁を望むトレッキングです。リフトに乗ってから歩き始め、 まずは有名なゴーブ湖へ。このコースで初めにビニュマールの北壁を望める風光明媚なポイントです。 一般の観光客ならこのあたりまで来て湖畔のカフェでお茶を飲んでのんびりという人も多いようですが、 私たちは日本からきた「アルチュウ(歩中)」ですから当然まだまだこの先まで歩きました。 天気もよく気持ちのいい青空の中、マーモットやアイサードのいう小型のシャモニーのようなシカを現地ガイドはしっかりと見つけます。 遠くてなかなか私たちの肉眼では見えにくいのですが、彼には見えているようでまさに野人です。 道は歩きやすいのですが、リフトの時間もあり目標の小屋までは歩けず、泣く泣く途中で引き返すことにしました。 結局リフトぎりぎりだったのですが、こういうところが難しいですね。

ゴーブ湖とビニュマール


 5日目は、ドッソウ谷のトレッキング。 しかしこの日もあいにくのガス模様。 時折薄日が差すような雰囲気があるので余計に期待してしまいます。 ここにもまた昨日とは違う野草がありました。 タツナミソウやラショウモンカズラの紫色の花弁だけを地面から生やしたような不思議な寄生植物です。 これは日本の図鑑では見かけない種類です。しかも、株によってはかなり巨大です。新緑の淡い色の林床ににょきにょきと生えている姿はなんとも不思議なものでした。 背が1mもあるリンドウにもびっくりです。「これがリンドウ?」と一同驚きの声をあげてしまいました。

ピレネーの花たち


 6日目は移動日でいよいよフランスからスペインへ入ります。 ピックドミディ展望台に立ち寄り、ピレネー山脈を一望しました。 展望台のふもとでは、ヒツジを山に放牧する大事な日にちょうど出くわし、道の真ん中を何百頭というヒツジとそのオーナー、 それにイベントに参加した人たちの行進を目にすることができました。カランカランとベルを鳴らしながら山に上がって行く姿はとても壮観でした。 秋までの間、ヒツジたちを山に上げるのは一年に一度ということなので本当にラッキーな私たちでした。そして、この展望台がある峠は、あの世界的に有名なツールド・フランスの峠越えハイライトの舞台。 ドライバーのルイに聞いてみたところ、毎年見に来るとのこと。欧米では、夏を告げる大切なスポーツイベントなんです。それを証明するかのように、峠には大きな自転車のモニュメントが建っていました。 今年こそはテレビでツールド・フランスを見ようと勝手に決めた私でした。

ピックドミディからの展望


 この後スペインに入り、バウゼンという日本で言えば古民家が残る小さな集落を訪れ集落の中を少し散策しました。 空き家になっている家や多少手直しをして現役で住まわれている家などがありましたが、やはりどこでも古民家というのは趣があるものです。 小さな集落なのでとてもフレンドリーで、お客さんの中にはある家に招き入れてもらい中を見せてくれた家もあったようです。ここから次のビエラはすぐ近く。 同じような谷あいの田舎でもフランスとスペインとでは雰囲気がちょっと違います。リゾートという立地のせいもあるのでしょうか、建物は新しいものが多く現代風のリゾート造りなんですが 決してばらばらのスタイルではなく何かしらの統一感があるなと、丘の上に立つパラドールの窓から見たときに感じました。



 翌日は少々内容を変更して、みんなでピークを目指すことにしました。 ガスのおかげでしっかり歩けなかったこともあったので、ピークに登ることには皆さんに大賛成していただき、 アプローチしやすくほどほどの時間で登れるピークを探して行ってみたのです。 サラナ山、おそらく日本人で登ったのは私たちが初めてでしょう。いかにも山頂らしいとがった頂上は360度の大パノラマ。 ピレネー山脈最高峰のアネト山までよく見えました。こういうことができるのも少人数のツアーの良さではないでしょうか。

サラナ山にて サラナ山にて2 サラナ山からの下りにて


 8日目は国立公園のサンマウリッチ湖畔散策。 今日は天気は文句なし! 青空をバックにした山はやっぱりいいものです。 水と緑と空と山。この組み合わせのマジックに酔ってしまうのでした。湖の周りを散策しながら、滝を眺め、景色のいいところでお昼にしました。 今回のツアーではランチのパンが非常に好評でした。やはり欧米のパンは日本のものよりおいしいのでしょうか? ほとんどの方がランチや食事のたびにおっしゃっていたので、やはりそうなんでしょう。 私も確かにおいしく感じるのですが、「空腹は最高のご馳走」というのが私のモットーでもあり、 景色を楽しみながらおいしく食べているお客さんを見ながら食べるのが私には一番おいしいく感じるように思います。 この後、公園を出るところで天気が急変し、突然の雷雨となりました。あと5分遅ければ全員ずぶぬれのところでしたので、 本当に運がよかったです。まったく雷雲の兆候がなかったので、これにはさすがに長く山をやっている私もびっくりさせられました。 山で気温が上がる日は侮れません。

 この後、未知の国、アンドラ公国へ宿泊して帰国の途についたのでした。
 お客さんと一緒に作るツアー、これが私の理想です。こんな私の考えに賛同していただける方はぜひ、お待ちしています。

(記/ 添乗員:渡辺和彦、写真:渡辺和彦)2011.6.6~15