ツアーレポート◆PROTREK モニターツアー 富士山新五合目 宝永山(2693m)



 2015/7/11 PROTREK モニターツアー 富士山新五合目 宝永山(2693m)

貸し出された「プロトレック」

 頂上を目指して登山道を歩いていると、「今いる標高はどのくらいで、あと何㍍登ればいいのか」と思うことがままある。地形と地形図を十分読みこなす力があれば、その問題は解決する。しかし、それができるのは地図読みに習熟した人たちだけだ。多くの一般登山者や入門者には難しいのが現実だろう。
 そういう時に力になってくれるのが、高性能のアウトドア用腕時計だ。アウトドア用腕時計には、「高度計」機能が装備されている製品が多い。カシオの「プロトレック」もそのひとつだ。プロトレックのモニターツアー(日帰り)を、山岳旅行大手「まいたび」が7月11日に実施した。行く先は富士・宝永山(2693㍍)。参加してみた。
 梅雨の晴れ間となった同日、参加者40人は東京都内を出発し、バスで東名高速を走った。車中ではプロトレックの使い方の説明を受けた。モニター用に貸し出されたプロトレックは、高度計のほか、方位計、気圧・温度計の機能があり、20気圧の防水機能もある。アウトドア用としては申し分ない性能を備えているといえるだろう。
 バスは富士宮ルートの登山口・5合目(2380㍍)に到着した。プロトレックを腕に付けていよいよ登山開始だ。記者は日常使いしているプロトレックの高度計を「2380」に合わせた。


6合目の山小屋・雲海荘

 小石と砂の混じった登山道を、40分ほどかけてゆっくり登った。宝永山荘、雲海荘の2軒の山小屋が立つ場所が6合目(2490㍍)だ。
 添乗員の登山ガイドが「高度計を2490㍍に合わせてみましょう」と参加者たちに声を掛けた。バス車内で教えられたとおりに、腕時計右側面にある高度計のボタンを押す。気圧の関係で、実際の標高より高かったり、低かったりする。それを修正し、実際の標高に合わせる必要がある。
 参加者たちは、修正作業を熱心に行い、不慣れな人には添乗員が手伝った。中年女性は、左腕に普段使っている時計とプロトレックを装着した。「便利そうだねぇ」と笑った。
 ここから登山道は、富士山頂と宝永山に向かう道が分岐する。我々は宝永山へ。このころから雲が晴れ始め、視界が開けてきた。岩場に足を取られないように15分ほど歩くと、第一火口に着いた。すり鉢の底のような地形が特徴的だ。頭上の雲は取れ、すっきりとした青空が広がった。宝永山の山頂付近や富士山方面まで見渡せた。

宝永山と富士山頂の分岐点を通過する

 月面を思わせるような急こう配の荒れ野に、イタドリの白い花が点々と咲いていた。高所に咲く花の生命力に、感動するばかりだ。
 ここから宝永山山頂までが、このルートの核心部になる。砂と小石の入り混じった急斜面を1時間も登らねばならない。斜面に置いた足が、砂地にめり込むように滑る。「1歩あるいて3歩下がる感じ」と添乗員は表現したが、まさにそんな感覚だ。

プロトレックをつけた女性の腕。自分の時計も同時につけている

 しかし、一歩一歩登るたびにプロトレックに表示される高度計の数字が増えてゆく。歩数が標高というデータに置き換わってゆく。
 数字が「2690」を指した時、急斜面は終わり、「馬の背」と呼ばれる平坦な稜線に飛び出た。辺りはすっかり雲に包まれたが、もう登る必要はない。一行に安ど感が広がる。思い思いに昼食をとった。その風景を、添乗員がカシオの新型カメラ「エクシリム」で周囲を撮影している。レンズとカメラ本体が切り離される、ユニークなカメラだ。
 午後2時、山頂へ向け出発。わずか10分ほどで、山頂へ。すっかり雲に包まれているが、登り切った充実感はある。私の左腕のプロトレックには、「2705」との数字が表示された。正解は2693㍍だが、誤差の範囲内だろう。

イタドリの花

笑顔で登る一行

第一火口にて。標識と高度計の誤差はままある

 高度計は登り始める前に調整をしておかないと、50㍍もの差が出ることはままある。高度計を山岳地域で上手に使うコツは、こまめに修正することだ。
 下山後、参加者に感想を聞いてみた。40代男性は「高度計は便利だと思った。方位計も」と話した。50代の女性は「ぜひ欲しいと思いました。標高が分かるし、(便利に)使えるといった印象です。 しかし、説明書を見なくても理解できるような、絵文字で表示してほしい」。実際に高度計機能を試してみた参加者はおおむね好評だったようだ。


第一火口から、宝永山山頂を望む

 プロトレックを登山と日常で使っている記者は、高度計、気圧計を主に使っている。自分の位置を推測したり、天候の先行きを予想したりするには欠かせない。腕を振るだけで文字盤が読めるバックライト機能も、消灯後の山小屋では大変助かっている。また、海釣りを趣味にしている同僚も「気圧計として使っている。海釣りでも天気の変化を予想することは大事だから」と言う。
 今後も計測機能は充実し、登山やアウトドアの安全に寄与することだろう。ただ、忘れてはならないのは、あくまで「機械は補助」ということだ。安全を実現するのは、登山者の高い意識と入念な事前準備が必要なことは言うまでもない。
【小野博宣】
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 おの・ひろのぶ 毎日新聞編集委員、企画推進本部長。山岳クラブ「毎日新聞山の会」に所属し、日本山岳ガイド協会公認の登山ガイド(ステージⅡ)の資格を持つ。